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2020年 ブログ

傍想録

不眠症 ③

新生塾Z講座  
2020.09.22(

 不眠症について、3ヶ月目になりますが今回で一区切りとなります。

 漢方は実践的治療術であることからも、結果を求めることが大切です。結果と同時にプロセスもしっかりしていなければなりません。

 さて、漢方では五臓すべてに精神性があるとされます。不眠においては、肝・心・脾が関与すると考えています。これらは情緒に関係する臓であるためです。

 具体的には、「肝鬱血虚」「心腎不交」「心脾両虚」といった弁証分型が一般的で、 代表方剤はそれぞれ、逍遙散、天王補心丹、帰脾湯です

 では、果たしてこれで結果を出すことができているのでしょうか。張景岳の『類経』と、そのルーツである『黄帝内経』を見直しながら、不眠について考えてみました。

 睡眠の本質は「陰」(先天因子)、現象は「神」(後天因子)が主ります。不眠の原因は「神」の乱れです。乱れる原因は邪実(実熱)、あるいは正虚(虚熱)にあります。

 つまり、不眠の原因は、精神的あるいは身体的要因によって、実熱か虚熱のいずれが生じることで起こるということです。これが漢方不眠治療のポイントになります。

 結果を導くには、従来の弁証分型ではなく「病機弁証」が不可欠です。病機弁証は、従来の中国伝統医学に拘泥するのではなく、現代に生きる我々のための有効手段となり得ます。

 脳科学において、不眠時の脳の温度は高くなっている。これと、先の実熱あるいは虚熱とはリンクしているはずです。

 今回の講座では、こうしたことを根拠に、新たなる漢方不眠弁証を考えました。

不眠症 ②

新生塾Z講座  
2020.08.23(

 前回に続き、「不眠症」について考えました。

 中医学における不眠の弁証論治には、大きく二つの考え方があります。

  1. 五臓病原論
  2. 陰陽消長論(衛気運行説)

​「五臓病原論」とは、不眠の原因として五臓(肝・心・脾・肺・腎)のいずれかが関係しているというものです。これは、中医学独特の考え方で、「五行説」(ごぎょうせつ)がもとになっています。

 五行説とは、世の中の全ての事象は木・火・土・金・水といった5つの何れかに集約できるという考え方です。この考え方は、易や占いへと通じていきます。

 漢方と占いとが同じルーツ・・・ここにこう言われると違和感を覚える方もいらっしゃることと思いますが、漢方は治療術ですので「当たるも八卦、当たらぬも八卦」であってはなりません。

ましてや、医学の発展によってカラダや病気のしくみが分かってきた現代において、伝統的医学への盲従は「中医学の負の側面」となりかねません。

 

一方の「陰陽消長論」ですが、これは人が自然と調和しながら生きているという教えです。太陽が昇れば(陽)活動し、日が沈めば(陰)穏やかに過ごす。花や葉のバイオリズム(昼開夜合)も同じですね。これを「天人相応」「天神合一」と言ったりします。

天人相応に逆らった生活をすれば、人のバイオリズムは乱れてしまいます。昼夜逆転の生活が続けば、いずれは精神にも支障を来すことでしょう。不眠症を考える時、この「陰陽消長論」については現代でも通ずるものがあります。

 

そこで、再び「不眠症の原因は熱である」について掘り下げました。

「脳の温度が高くなる」と眠れなくなる。では、脳の温度(脳温と名付けます)を上昇させる要因は何か。これが「心火」「肝火」です。

そこで、心と肝の生理を復習します。「心は神明を主る」「心は血脈を主る」「肝は情志を主り、気機を調整する」です。ここに何らかの不具合が起こって心火や肝火を生じ、睡眠を妨げているのです。

 

先にも述べたとおり、中医学理論は新旧混交にて、使える理論とそうでないものとがあります。従って、中医学は随時アップデートしていかなければなりません。


不眠を考えながら、中医理論をアップデートします。

「脳は睡眠を主る」「心は血脈を主り、脳を統制する」「脳は情志を主り、気機を調整する」

心と肝の生理はこのように書き換えられます。考えてみれば、心は「こころ」ですから、精神に関係すると古くから認識されています。しかし、本来の「こころ」は脳にあるわけです。つまり、心火は「脳温の上昇」へとつながります。肝火も同じです。

この観点を持たなければ、漢方で不眠症を解決することはできません。

このことを踏まえ、事前に私から3症例、メンバーから4症例について検討しました。病機と方剤の検証、継続例について検討することにしました。

症例1)35歳男性 
【主訴】入眠困難・中途覚醒
【随伴症状】盗汗(ねあせ)、動悸、倦怠感、頭重

症例2)55歳男性
【主訴】中途覚醒
【随伴症状】食欲低下

症例3)53歳女性 不安・入眠困難
【主訴】不安、不眠
【随伴症状】うつ傾向、ほてり、盗汗、口乾

症例4)73歳女性 
【主訴】入眠困難・中途覚醒
【随伴症状】動悸、頭痛、焦燥感

症例5)41歳女性 
【主訴】中途覚醒
【随伴症状】動悸、息苦しい、納呆

症例6)47歳女性
【主訴】中途覚醒
【随伴症状】咽頭痛、舌痛、易怒、不安感

症例7)51歳女性
【主訴】入眠困難・中途覚醒
【随伴症状】倦怠感、肩こり、イライラ、のぼせ

不眠症 ① 

新生塾Z講座
2020.07.19(

漢方には、眠気を誘うという性質の薬はありません。

「今晩どうしても眠りたい」というのであれば、西洋薬に軍配が上がります。

一方、精神的・肉体的な原因によって「慢性的に眠れない」といった場合の一助となり得ます。つまり、漢方は”不眠”ではなく”不眠症”が対象になるわけです。

昨今では、一般の方でも漢方が身近になり、ご自身の現在の悩みにはどんな漢方薬が合うのかを知ることができます。ネットで検索すれば、症状別に漢方薬が紹介されています。

しかし、こうした情報をもとに漢方薬を服用しても、満足のいく効果は得られにくいでしょう。殊に「不眠症」については、それが顕著に現れる分野です。

漢方について少し学べば、「不眠症」で浮かぶ漢方薬の筆頭に上がるのは帰脾湯や酸棗仁湯ということになるでしょう。しかし、闇雲に使っても、実際に効果は得られないという現実があります。

それにもかかわらず、なぜいまだに不眠症に帰脾湯や酸棗仁湯が効くというイメージが固着しているのでしょう。

そこには、「中医学」の負の側面が関係しています。

中医学とは、中国伝統医学のことです。そこには独自の伝統理論があり、現代においても金科玉条のごとく守られています。

これが問題なのです。

医学は日進月歩にあります。一方、漢方は時代を経てもアップデートされていません。今となっては空理空論とも言える当時の理論に固執し、条件反射的に漢方を考えるという実態があるのです。

つまり、「理論的には効く」ということになっているのです。

 

そこで、「不眠症」を考え直すことにしました。

まずは、既存の弁証論治について、実際にはどれが使えてどれが使えないのかを、臨床的な見地から再検証しました。

肝鬱血虚、心脾両虚、心火、心腎不交、心陰虚、虚陽上浮、痰熱内擾、心胆気虚、胃気不和・・・

その上で、実際はどのように考え、漢方薬を運用するべきかを提案しました。

不眠症の実際

不眠症の原因は「熱」です。これには実熱と虚熱があります。では、なぜ熱が生じるのか。そこには精神的要因と肉体的要因とがあります。

そこで、「主訴」の掘り下げが必要になります。主訴はもちろん「眠れない」ですが、どんな風に眠れないのかは人によって違います。

寝付きが悪いだけの「入眠困難」、途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、朝早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」といった具合です。

主訴以外に気になる症状はないかどうかも確認します。これを「随伴症状」と言います。不眠症における随伴症状は多岐にわたります。

動悸、倦怠感、食欲不振、眠気(嗜眠)、イライラ、口が苦い、目が充血、腹脹(お腹がはる)、耳鳴り、盗汗(ねあせ)、ほてり、口乾・・・

次に、主訴と随伴症状との関係性について検証します。随伴症状は手がかりにはなっても深入りしないことが大切です。経験の浅い方は、主訴で弁証したつもりが、いつの間にか随伴症状で弁証していたりすることが少なくありません。

当勉強会では、先述したような中医学理論に固執せず、むしろアップデートすべきというスタンスをとっています。睡眠についても、現代では既に分かっているメカニズムを参にして新しい漢方を考えます。

睡眠の原因について、精神的要因と肉体的要因があると述べました。身体の問題は、精神が原因のこともあり、双方向性であったりします。

そこで、考えるのが脳の温度です。これは、実際に測定するわけではありませんが、不眠症に悩む方の多くは、睡眠しようとする時に脳の温度が高まっています。先述したように「不眠症の原因は熱である」というわけです。

漢方的に言い換えれば、「陽気が盛ん過ぎるか、陰気が弱すぎると、眠れなくなる」のです。いわば ”活動モード” ということです。

そこで、陰陽と不眠の関係性が重要になります。勉強会では、陰陽の優劣と実熱・虚熱との関係性を考え、それぞれに代表的な漢方薬を提示しました。

次回は、脳の温度が上がる要因について、新たな漢方理論へと展開していきます。

温経湯

新生塾Z講座  
2020.05.17(

今回は、2度目のオンライン講座でした。Web会議システムZoomを使用したため、通称「新生塾Z講座」としております。

本講座

2月からの温経湯の吟味はまだまだ継続しています。

先月は温経湯に関連する症例検討をしましたが、今回はあらためてその症例を振り返りました。メンバーの中には初級者もいるため、症例検討を通して中医学の基礎理論を復習し、臨床で使えるものとそうでないものとを整理しました。

皆さん難しそうな顔をされていますね。。。

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